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No.10
サトラレ TRIBUTE to a SAD GENIUS 2001/日
監督 本広克行
脚本 戸田山雅司
原作 佐藤マコト
音楽 渡辺俊幸
出演 安藤政信 / 鈴木京香 / 内山理名 / 松重豊 / 小野武彦 / 寺尾聰 / 八千草薫

ありえない話
いやぁ~最初はバカにしていました。映画館では見ようとも思わなかった作品です。「サトラレ」というタイトルで引いていました。これは、人に何かを「さとられる」という意味から来ています。そんな言葉がタイトルですから端から見ようとは考えていませんでした。しかし、なぜかDVD売場で手に取ったら買いたくなってしまいました。
1枚組
本編130分、本編以外に、文字ベースの作品解説とメイキングが入った特典映像が収録されています。メイキングは、役者の人となりがわかって、結構見ごたえがあります。ケースは、CDタイプです。
意外にいいのよ、これが・・・
映画が始まってすぐの自衛隊が登場するシーンは、なかなかリアリティがあり映画への期待感を誘います。それに続く、国家がなぜ「サトラレ」を保護するかという説明で、とても大げさな部分がありちょっとうそ臭くも感じます。しかし、映画が、主人公が住んでいる奥美濃に舞台が移ると、一転、「サトラレ」及び、「サトラレ」を取り巻く人物の登場で、普通では考えられない「乖離性意志伝播過剰障害」をもつ人間との普通の人々との関わりが描かれ、冒頭部分の嘘臭さは、払拭されていきます。特殊な障害あり、国家によってコントロールされている人間との奇妙な団体生活は、一見ばかばかしくも見えるのですが、このような事は、形は違えど現在にもあり得る事です。人間は、特殊な環境下に置かれる事(映画を見ること)で、自分の立場などを再認識するものです。普段はなかなか自分の置かれている立場なんかはわかる機会が内ですからね。だから映画は、面白いのかも。
また、この映画をより面白いものにしているのは、登場している俳優によるところも大きいです。主人公は、奥美濃の病院の研修医をしているのですが、その主人公を指導する医師は、黒澤監督の映画でもおなじみの寺尾聡が演じています。この医者がまた暖かみがあっていいのです。また、主人公の唯一の肉親役の祖母を演じているのが、八千草薫です。この祖母との関係がある事で、「サトラレ」の人となりがとてもよく見えてきます。この二人がいなければこの映画の成功はあり得なかったでしょう。このあり得ないストーリーを,もしかしたらあるのかもと思わせてくれるのです。
この映画は、特殊な障害を持った人間のお話だけではなく、人間が生きて行くことは何か、建前と本音とは何か、人間は正直に生きて行くことはいけないのか。という事を観客に問いかけ、生きている人たちの顔の見えない現代社会に対して、人間と人間は常にお互いを信じ、助け合っていかなければいけないという事を、押し付けることなく訴えています。
最後には、号泣する場面もあります。娯楽作品としてとてもよく仕上がっています。 しつこい音楽の使い方と、360度ぐるぐる回るカメラワークがくどいというのがちょっと残念ですが。
評価
意外性もあり、日本映画の未来が開けるような作品です。ぜひ皆さんに見ていただきたいと思います。ランクBです。